
推薦者・まつかわゆま
『見はらし世代』
日本人史上最年少26歳でカンヌ監督週間に選出された団塚唯我(だんづか・ゆいが)監督。
父はランドスケープデザイナーとして渋谷の宮下公園再開発を手がけた人、ということはこの作品は自伝か?と思ったが監督曰く「個人的なところから出発したけれど、スタッフやキャストからのアイデアがたくさんあって一つのフィクションになっていった」そうな。
20代のスタッフたちには初めての長編という人も多かったという。
主役を務めた黒崎煌代(くろさき こうだい)にとっても初めての主役。
「ぼくにとっての監督はスペシャルな友達」という二人は「さよなら ほやマン」からのコンビ。
あらかじめ役を作りこむのではなく、反応を見ながらリアクションで作っていくタイプらしい黒崎には「手離しで信頼してくれている」団塚監督のやり方がしっくりくるのだろう。
母を自死に追いやり姉弟を捨てた父に対しての複雑な思いを持つ主人公・蓮が疎遠だった父と偶然再会し、家族をもう一度やり直すことはできないかとどこかで思う自分と葛藤する。
黒崎はそのアンビバレントな感情を皮膚の一枚下に漂わせながら、抑制を効かせて演じている。
ひんやりとした色調と光の映像がとらえる渋谷の街が、無機質な輝きで、あらかじめ熱情を捨てている、そんなものを信じられない未来を見はらしている世代を映し出す。
自分の自由と成功を子どもや妻よりも優先した父親は、自己実現こそが人生の目的であってよいとあおられた時代の寵児でもある。
失ったものの重さに号泣する父・・・・・・。
蓮と姉はもう一度失い、そして訣別し、自分の人生にあらためてふみだしていくのだ。
団塚唯我監督と黒崎煌代、今年記憶すべき”新人”ふたりである。
10月10日(金) Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺ほか全国公開
配給・シグロ


