次の世代へ戦争の実態を伝える『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』
©武田一義・白泉社/2025「ペリリュー ―楽園のゲルニカ―」製作委員会

推薦者・立花珠樹

 ペリリュー島は、南太平洋の島国、パラオ共和国にあるサンゴ礁の島だ。東京の豊島区とほぼ同じ広さの小さな島では、第2次世界大戦中の1944年9月から2カ月半にわたり、日本軍約1万人、米軍1600人以上が死亡する激しい戦いが行われた。
組織的な戦闘が終結した後も、日本兵は洞窟などにたてこもり続け、最終的に生き残った34人の兵士が武装解除し投降したのは、終戦から2年後の1947年4月だった。
 『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』は、日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した漫画を原作に、この戦いに従軍した若い日本兵の目を通して、戦場の実態を描いたアニメーション映画だ。
 重いテーマだが、兵士たちのキャラクターに漫画的なかわいらしさがあるのに加え、米軍を含めて「誰のことも悪役として描かない」(原作・共同脚本の武田一義)という優しさが作品を貫いており、見るのがつらい映画ではない。
 見終わった後、地図でペリリュー島の位置を確かめた。わすか80年前、召集令状1枚で、こんなに遠くまで連れてこられ、絶望的な戦いの果てに死んだ日本人が1万人もいたのだ。もし、自分の家族や知り合いがいたら、どんな気持ちになるだろうと思った。
 1975年生まれの原作者が、この漫画に取り組み始めたのは戦後70年(2015年)だった。長期連載の過程で、現地や生還者の声などを丁寧に取材してきた蓄積が、映画の中に生きている。戦争を知らない世代が、こうした映画を作り、さらに次の世代に、戦争の悲惨さを伝えていく意味は大きい。

12月5日(金)全国公開
配給:東映