コロナ禍を背景にしたアメリカ西部の不条理劇「エディントンへようこそ」

推薦者・田中千世子

 アリ・アスター監督のホラーとヴァイオレンスが西部劇の聖地ニューメキシコ州の町、エディントン(映画のなかだけに存在する)でゆるゆるした展開ながら最後に炸裂。なんとも不思議な味わいである。アスターは子供時代を送ったニューメキシコで映画を撮りたい、そうだ、西部劇だ!という願望が早くからあったとか。土埃が舞う風土、面倒見のいい保安官(ホアキン・フェニックス)、宿敵の金持ち市長と揃ったところで、2020年のコロナ禍が背景となるのが何とも大胆である。町には全然コロナ感染の危険も気配もないのに、市長命令によるマスクの強要が息苦しい。他の州で黒人男性が警官に殺されたから、ここでも抗議集会を開いてさかんにいきまく女子がいる。保安官の妻は長年の精神不安定で夫よりもカルト集団の教祖に夢中。そしてあれこれいろいろあって、エディトンは事もなし。えっ、本当?という不条理ともブラック・コメディとも言えるような言えないようなアリ・アスター監督の最前線なのである。

配給︓ハピネットファントム・スタジオ
2025年12月12日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
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