メンバーズチョイス よく練られた骨太な作品 『恋愛裁判』 推薦者・立花珠樹 深田晃司監督『恋愛裁判』は、アイドルの交際をめぐって実際にあった裁判などを基にして、アイドルグループのメンバーである若い女性が、さまざまな現実の壁にぶつかりながら、自分の生き方を見つけていく映画だ。 発案から完成まで約10年。長期間の取材を経て監督自らが書いた脚本が、とてもよく練り上げられており、...
メンバーズチョイス 「暴力で、ではなく世界を救う」ことはできるのか 『果てしなきスカーレット』 推薦者・まつかわゆま すでに公開されているが、批評的には賛否両論の否の方が優勢で、興行的にも苦戦している様子。だが、私は細野守監督の迷いつつの選択、というか表明を支持したい。 アカデミック的には作品をあくまでもテクストとして一本ずつを分析し評価すべきであり、作者の背景や時代に引っ張られてはいけないといつも注意される...
メンバーズチョイス 狙い撃ちで殺された女性ジャーナリストの叫び『手に魂を込め、歩いてみれば』 推薦者・まつかわゆま カンヌ映画祭でどうしてもチケットが入手できず見逃してしまったドキュメンタリーである。キャンセル待ちの列にも2時間ほど並んだが入れなかった。今年一番話題の作品だった、といってもよかろう。 2025年4月15日、カンヌ映画祭の並行週間の一つACID部門(映画作家たちが創設した「インディペンデント映...
メンバーズチョイス コロナ禍を背景にしたアメリカ西部の不条理劇「エディントンへようこそ」 推薦者・田中千世子 アリ・アスター監督のホラーとヴァイオレンスが西部劇の聖地ニューメキシコ州の町、エディントン(映画のなかだけに存在する)でゆるゆるした展開ながら最後に炸裂。なんとも不思議な味わいである。アスターは子供時代を送ったニューメキシコで映画を撮りたい、そうだ、西部劇だ!という願望が早くからあったとか。土埃が...
メンバーズチョイス 次の世代へ戦争の実態を伝える『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』 推薦者・立花珠樹 ペリリュー島は、南太平洋の島国、パラオ共和国にあるサンゴ礁の島だ。東京の豊島区とほぼ同じ広さの小さな島では、第2次世界大戦中の1944年9月から2カ月半にわたり、日本軍約1万人、米軍1600人以上が死亡する激しい戦いが行われた。 組織的な戦闘が終結した後も、日本兵は洞窟などにたてこもり続け、最終的に...
メンバーズチョイス 貧乏の底に蠢く幸せな模擬家族 『ナイトフラワー』 推薦者・田中千世子 ハードボイルドなシスターフッド全開の快作である。 多額の借金をこしらえて夫が逃げたあと、大阪から東京に越してきた母子3人家族が貧乏のどん底にいる。 小学生の賢い娘は給食をせっせとお代わりして飢えをしのぐ。 昼も夜も働きづめの夏希(北川景子)は、夜の街で偶然手にした覚せい剤を売り始めるが、組織に捕ま...
メンバーズチョイス 94歳監督の人間賛歌。倍賞の歌声が素晴らしい 『TOKYOタクシー』 推薦者・立花珠樹 シネコン普及以前には、行き当たりばったりで映画館に入ることが、しばしばあった。 何の予備知識も持たずに見て、心をつかまれ、宝物になった作品も多い。 山田洋次監督『TOKYOタクシー』を見て、そんな青春時代の記憶がよみがえったのは、この作品に、映画の楽しさがあふれているせいだろう。 フランス映画「パリ...
メンバーズチョイス 映画を、アジアを、妻を、愛しぬいた『佐藤忠男、映画の旅』 推薦者・立花珠樹 映画評論家の佐藤忠男、久子夫妻に筆者が初めて会ったのは、1994年。 佐藤がディレクターを務める第4回「アジアフォーカス・福岡映画祭」の会場だった。 2007年には、佐藤が栄誉賞を受賞したインドの映画祭に夫妻に同行。 アジア各国の優れた映画を発掘してきた仕事が、いかに海外で高く評価されているかを実感...
メンバーズチョイス 自分たちを捨てた父と再会する青年の葛藤『見はらし世代』 推薦者・まつかわゆま 『見はらし世代』 日本人史上最年少26歳でカンヌ監督週間に選出された団塚唯我(だんづか・ゆいが)監督。 父はランドスケープデザイナーとして渋谷の宮下公園再開発を手がけた人、ということはこの作品は自伝か?と思ったが監督曰く「個人的なところから出発したけれど、スタッフやキャストからのアイデアがたくさん...
メンバーズチョイス 逃げる男と追う女を描き、カンヌ映画祭監督賞を受賞『グランドツアー』 推薦者・田中千世子 ポルトガルのミゲル・ゴメスが2024年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した傑作。 恋する男女の狂おしさを過去の時代に描いた2012年の『熱波』と対照的な逃げる男と追う女をやはり過去の時代によみがえらせた。 ビルマのラングーン、シンガポール、サイゴンの先に大阪も登場するグランドツアー。 現代の風景は見...