
報告者・佐藤結
2026年6月20日、第35回日本映画プロフェッショナル大賞の授賞式がテアトル新宿にて行われた。授賞式の冒頭では、実行委員長で映画ジャーナリストの大高宏雄が、賞のできた経緯を説明。1991年に見て感激した萩庭貞明監督の『遊びの時間は終わらない』が映画賞に絡まなかったことに驚き「なにかしなければ、こういった作品が埋もれてしまう」と危機感を感じたことが賞を始めるきっかけだったと振り返った。同賞はプロデューサー、映画監督、脚本家、新聞記者、映画評論家など、“映画のプロ”32人が選考委員を務め、投票と実行委員会の独自の判断で各賞が決定される。
最初に発表された新人監督賞に選ばれたのは『見はらし世代』の団塚唯我。選考委員も務めた映画評論家の森直人が「令和最初の『東京物語』と思うくらい惚れ込んでいます」とコメントしながら花束を贈呈。団塚監督も「こういう場所に戻ってこられるよう、映画を作り続けていけたらと強く思います」とあいさつした。特別賞『アジアのユニークな国』製作チーム。山内ケンジ監督をはじめ、スタッフ、出演者が揃って壇上に上がって、記念盾を受けた。
主演女優賞は『平場の月』の井川遥、主演男優賞は『「桐島です」』の毎熊克哉

主演女優賞は『平場の月』の井川遥。劇中のセリフと重ねて「夢のような時間」と口にした井川は、難しい役を演じながら「すべての経験がつながっていくように感じた」と撮影中の思い出を語った。主演男優賞は『「桐島です」』の毎熊克哉。エキストラで参加した高橋伴明監督の『禅 ZEN』(09)が役者人生の始まりだったという毎熊は、「桐島聡という人物を託してもらったが不安でいっぱい」だったとのことで「高橋監督のもとに集まった超一流の人たちがいなかったらできなかった」と感謝を述べた。
監督賞は『ゆきてかへらぬ』の根岸吉太郎監督。15年ぶりの新作での受賞に「死ぬ前にもう2、3本は撮りたいなと思っているので、またその時は皆さんのご支援を期待しております。よろしくお願いします」と意欲を見せた。さらに、続いて発表される作品賞『「桐島です」』につながるエピソードを披露。1971年12月に起きた「新宿クリスマスツリー爆弾事件」当日に、近くにある映画館でミケランジェロ・アントニオーニの『欲望(Blow-up)』(66)を見ていたという。「新宿クリスマスツリー爆弾事件」といえば、『「桐島です」』の脚本家である梶原阿貴が自伝『爆弾犯の娘』で明らかにしたように、彼女の父、梶原譲二も属していた黒ヘル「鎌田グループ」が起こした事件。梶原は自身のそうした経歴を高橋伴明監督に見込まれ『「桐島です」』の脚本を手がけたが、本人の登壇前に根岸監督から「紹介」されるサプライズとなった。
作品賞は『「桐島です」』

主演男優賞との2冠となった作品賞の『「桐島です」』からは、療養中の高橋伴明監督に代わって製作総指揮の長尾和宏、脚本の梶原阿貴が登壇。梶原は「桐島聡が50年前に何を考えてあのようなことをしたのか。それは50年経った今に直結している問題です。そのことをよく考えて、もう1度映画を見ていただけると、また違う楽しみ方があると思います。最後に、全ての差別と戦争に反対します」と力強く語った。
最後に、特別功労賞の塩見三省がステージに立ち、14年に脳出血で倒れて以降、映画の撮影現場は唯一の居場所となり「どれほどの支えになったことか」と、静かに言葉をつなぎ、会場から大きな拍手を受けていた。
授賞式の終了後は、新作『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』の公開も待ち遠しい塚本晋也監督と、映画館ユーロスペースの代表取締役・北條誠人との特別トークイベント「日本映画とミニシアター」が行われた。先ごろ発表されたシネスイッチ銀座閉館のニュースを皮切りに、それぞれが見てきたミニシアターのこれまでと現状が語られた。



