怪談に着想を得た記憶の物語『ユースフル・ゴースト』
© 2025 185 FILMS, HAUT LES MAINS, MOMO FILM CO.

推薦者・佐藤結

最愛の妻の魂が掃除機に宿る

 タイでは知らない人のないほど有名な“怪談”を出発点にしたスタイリッシュでコミカルなホラーから、歴史を「忘れない」ことの意味を考えさせるドラマへと変奏していくユニークなタイ映画。

 最愛の妻ナットが出産時に命を落としてしまった痛手から立ち直ることのできないマーチ。しかし、ナットの魂は掃除機に宿り、彼の前に戻ってくる。家族たちから好奇の目に晒されながらも、再び愛のある生活に戻れて喜ぶマーチ。ナットも自身の存在価値を示すため、マーチの母が営む工場にとりついた霊を追い払うために奔走する。

 死後も夫のもとにとどまる美女メー・ナークが主人公の怪談『プラカノーンのメー・ナーク』。タイでは何度も映像化され、日本でも『ナンナーク』(99)や『愛しのゴースト』(13)といった作品が紹介されてきた。この物語に着想を得た『ユースフル・ゴースト』では『愛しのゴースト』にも主演したダビカ・ホーンがナット役を演じている。

© 2025 185 FILMS, HAUT LES MAINS, MOMO FILM CO.

この世を去れない魂たちが伝えようとしたこと

 「よく知られた歴史的エピソードや文学、テレビドラマからキャラクターを持ってきて、新しい文脈に置いてみるのが好き」というラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク監督は、初長編となる今作で、主人公たちとは関係のない男性のもとにやってきた掃除機修理人が語る「物語」という二重構造を使って、死さえも分かつことのできない強い絆と、死を乗り越えて真実を伝えようとする意思を描いた。そこから浮かび上がる、タイの現代史や様々な課題は知らないことばかりだったが、「次はあなたが伝える番だ」と静かに言われているような気がした。

『ユースフル・ゴースト』
7.10 Fri 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
監督・脚本:ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク 
出演:ダビカ・ホーン、ウィットサルート・ヒンマラート、アパシリ・ニティポン
配給・宣伝:SUNDAE(Powered by Filmarks)

公式サイト sundae-films.com/useful-ghost/