
推薦人:遠藤京子
人生の価値を示す感動作『サンキュー、チャック!』
スティーヴン・キングの中編『The Life of Chuck』(邦題は『チャックの数奇な人生 イフ・イット・ブリーズ』(長い!)(文藝春秋刊))の映画化。アメリカの地方都市、英語(つまり国語)の授業でホイットマン『草の葉』の朗読中、教師のマーティーがスマホに気を取られている生徒を注意すると、カリフォルニアで大地震が起こったという。学校から帰るいつもの車道も崩落し、インターネットも使えなくなり、ドイツでは火山が噴火、日本ではまた原子炉が浸水、世界規模で日常が壊れていてミツバチも絶滅。絶望して離婚する人々も急増中という末期的な有様。そんな中、なぜか「39年間、ありがとう、チャック!」という広告が街に溢れる。ビルボードだけではない。テレビがついに放送休止になったあとに「チャック・グランツ、ありがとう!」というコマーシャルが出てくる。そのあとも壊れゆく世界で、飛行機によるスカイライティングから、街角のグラフィティまでチャックを讃えて感謝している。メガネをかけたスーツ姿の、一見平凡なサラリーマンにしか見えないチャックとは何者?
この映画は第3章から始まって第2章、第1章とさかのぼっていく。第2章でいよいよチャック・グランツが主役になる。ある晴れた日、ミッドウエスト銀行会計士のチャックは、ストリートミュージシャンが叩くドラムの音を聞いて、なぜか通り過ぎず、そのまま踊り出した――。このダンスがまた素晴らしい。会計士チャックはなぜ踊れるのか。彼が世界から感謝されるのはなぜ?
第1章で、世界の終りとチャックとの関連がわかるしかけで、この原稿はネタバレなしで進めることにするが(公開後、数ヶ月経ったらネタバレありの解説に書き変えるかもしれない)『ラ・ラ・ランド』のスタッフが関わったダンスシーンは見応えがあり、キャスティングも素晴らしい。チャック役は文芸作から『アベンジャーズ』まで幅広く活躍するトム・ヒドルストン。マーティー役はアカデミー賞ノミネート歴があるキウェテル・イジョフォー。さらに、チャックを育てた祖父役は『スターウォーズ』のマーク・ハミル。演技もダンスも素晴らしい子役のベンジャミン・パジャックにも注目。人生の美しさや、人生に価値を見出すのは自分自身だという見落としがちな真実を描いた優れた作品だ。
『サンキュー、チャック!』
◆公開日:5月1日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー
◆配給:ギャガ=松竹
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